【歌詞分析】心を掴む秘密は?ユーミンの「海を見ていた午後」の歌詞に学ぶ②

昨日の続きです。

【歌詞分析】心を掴む秘密は?ユーミンの「海を見ていた午後」の歌詞に学ぶ①

松任谷由美さんの「海を見ていた午後」の歌詞を分析してみましょう。

ここは、カメラワークを上手に使っているなと感じます。山手のドルフィンの情景描写だけでは、レストランの中の映像が頭に流れているだけですよね。カメラワークとしては、狭い空間だけという印象です。

ここで、「晴れた午後には 遠く三浦岬も見える」と歌うことで、一気にカメラワークが窓の外の遠くまで動きます。これによって、浮かんでくる映像に奥行きが出ますね!

また、今は晴れた午後ではないことから、気持ちと同じ曇り空?小雨が降っている?などと想像できます。天気と気持ちを絶妙にリンクさせているのも、世界観がより主人公の気持ちに沿っていて、心情が伝わってくるのが素晴らしいです。

ここの歌詞が、私が心底感動した大好きな部分です。
「ソーダ水の中を 貨物船がとおる」。
実際に、山手のドルフィンでソーダ水を頼み、グラス越しに窓の外を眺めると、貨物船が通るそうです。

浮かぶ映像もスノードームみたいでとても素敵ですよね。なんともロマンチックな映像なのが、憂鬱な主人公とのコントラストを感じさせてグッときます。

そしてこれは個人的な印象ですが、「ソーダ水」という単語から、レトロな世界観を感じます。このあとに出てくる紙ナプキンやインクなどの小物も、全てがこの一曲の世界観を作るのに欠かせないもののように感じました。

ソーダ水のグラスを覗くと、小さなアワが浮かんできますよね。それを儚い恋に例えて「消えていった」と表現しています。ここで、泡を「アワ」と書いていますが、やはり歌詞全体を見渡した時に、ちょうどいいバランスでカタカナが入っているんですよね。

私も、作詞するときには、ひらがな、カタカナ、漢字のバランスを考えるのですが、見ているだけでも美しい歌詞だと感じるのは、こういった細かい表現力があるからなのでしょう。

ここで一気に、舞台はレストランからあの日のあの時の場面に移ります。「あのとき目の前で 思い切り泣けたら」とあるので、主人公が涙を堪えたことがわかりますね。

涙を堪えるということは、相手のことを思って未練がないように装った?強がりな性格で泣けなかった?など、想像が膨らみます。

相手にしつこく連絡したり、相手を追いかけたりせずに、思い出のレストランで静かに相手を思いながらソーダ水を飲んでいる光景を浮かべると、主人公は本当は弱い部分を抱えながらも、最後まで相手の理想の自分でいるために大人でいたかったのかな?とも思います。

強がって大人な自分でいたい気持ちとは裏腹に、ここでは少し悔やんでいる表現が入ってきます。「今頃二人 ここで海を見ていたはず」と、後悔しているようですね。

強がっているけれど実は弱いって、聴き手にはすごく人間的でリアルな人柄が浮かんできます。

どんな物語でもそうですが、完璧ってつまらないものです。闇があるから夜空の星が輝いて見えるように、主人公の弱い部分を見せるのも作詞の表現の大きなポイントだと思います。

余談ですが、ドラえもんの中で1番人気がないのは出木杉くんという噂も…。完璧そうなしずかちゃんでさえもバイオリンが下手だったり、ドラえもんだって映画で毎回道具が壊れるミスを犯したり(笑)

やっぱり共感できる人間的なマイナス部分こそ、歌詞を「自分ごと」だと捉えてもらえるコツなのかもしれません。

長くなってきたので、続きはまた次回→

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