【歌詞分析】心を掴む秘密は?ユーミンの「海を見ていた午後」の歌詞に学ぶ①

こんにちは、「言葉LABO」のtomatoです🍅

ソーダ水の向こうに見える、貨物船。テーブルに残された、指輪。 松任谷由実さんの名曲『海を見ていた午後』を聴くと、まるで一本の映画を観たかのような、鮮やかな情景が心に残りますよね。

初めてこの曲の歌詞を聴いた時、「たったワンシーンの映像でここまで感情が動くんだ」と感動したことを覚えています。作詞ってすごいなと興味を持ったきっかけになった曲でもあります。

なぜ、この曲の歌詞は、これほどまでに人の心を掴み、景色を見せるのでしょうか?

今日は、この名曲の歌詞を私なりに分析してみようと思います。

まずは、松任谷由美さんの「海を見ていた午後」の歌詞を見てみましょう。

浮かぶ情景も表現も、本当に美しいですよね。

素直に曲を聴いて、いい曲だなと心底味わったあとは、どうやったらこんなに素敵な歌詞が書けるのか、私の想像も交えながらですが、じっくり分析してみましょう!

「海を見ていた午後」の舞台背景と設定

まず、この曲を聴いた時に浮かんでくる映像をまとめてみました。

舞台
・山手にあるドルフィンという名前の静かなレストラン
・坂の上にある
・海沿いにあって、貨物船が通るのが見える
・晴れていれば三浦岬も見える
・思いを寄せる人とよく来ていた場所

主人公
・一人の女性
・あの人と来ていたお店でつい来てしまう
・あの日、あの人の前で思い切り泣けなかったことを少し悔やんでいる
・あの人に忘れないでほしいと思っている

小物
・テーブルに置かれた紙ナプキンとペン
・お店のメニューのソーダ(クリームソーダ?)
・彼がほほをよせてカモメを追いかけていた窓
・テーブル

歌詞を箇条書きにしてみると、かなり具体的に固有名詞や舞台設定、小物や主人公の設定が作り込まれているのがわかりますね。

たまに、自分が書いた歌詞をこうして箇条書きにしてみたときに、設定が曖昧でふわふわしている時があります。曲のタイプにもよりますが、やはり設定がふわふわしていると、曲を聴いた時の印象もぼやけてしまうものです。

「海を見ていた午後」の歌詞分析

ここからは、私なりに歌詞を分析していきます。

「あなたを思い出す この店に来るたび」

「この店に来るたび」よりも「あなたを思い出す」が先に来ていることで、あの人を思い出したくてつい来てしまうという気持ちがより強く伝わってきますね。

もしも、「この店に来るたび あなたを思い出す」だったら、お店に来たついでに思い出すという意味合いが強くなってしまう気がします。だからこそ、倒置法を使って「あなたを思い出す」を先に持ってきたのかなと想像しました。

「坂を上って きょうもひとり来てしまった」

この「きょうもひとり来てしまった」という一文で、

前に進もうとしているのに来てしまう
二人の思い出のレストランは誰かとではなくひとりで来たい
そしてもう少しだけ忘れられないこの気持ちを大切にしたい…

そんな心情が伝わってきます。

作詞は、小説とは違って、いかに短い文章に情景や思いを乗せられるかがポイントです。だからこそ、「前に進みたいのに」とか「まだ忘れられない」と説明するよりも「きょうもひとり来てしまった」。この一文に全てを包み込めるユーミンってすごいなぁと改めて感じました!

まだ2行目…笑
続いていってみましょう!

「山手のドルフィンは 静かなレストラン」

ここで、固有名詞が出てきました。

山手のドルフィンって、実際にあるレストランなんですよね。もしここで「丘の上のレストラン」とか「静かなレストラン」だけだったら、聴き手の頭に流れる映像はもっとぼんやりしていたでしょう。

「ドルフィン」という名前を使うと、抽象度が低くなるので、意味や印象がギュッと凝縮される気がします。海辺のレストランで「ドルフィン」というイルカを連想させる名前なのも、またいいですよね♪

そして、ほどよくカタカナが混ざることで、歌詞を目で眺めたときのバランスも美しくなります。

長くなりそうなので、次に続きます。→

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